2003年夏 フランス美術館鑑賞記(2)
― Vittelを飲みながら(笑) ―


◇ストラスブール美術館Musee des Beaux-Arts,Strasbourg




パレ・ロアン
ストラスブール美術館 正門
   
 コルマールから列車でストラスブールに戻り、パレ・ロアン(Palais Rohan)に向った。ストラスブールの要とも言うべきノートルダム大聖堂のすぐ側(向って右側奥)にパレ・ロアン「ストラスブール美術館(Le Musees de Strasbourg)」がある。歴史博物館も兼ねた展示内容になっている。

 中でも、古典絵画を展示しているのが「Musee des Beaux-Arts」だ。ルーベンスもあるという惹句に、ちょっと期待して出かけた。まぁ、お目当てのルーべンス作品はそれなりだったが(^^;、ジォットを始めルネサンス絵画からバロックまで、意外にイアタリア絵画が充実しており楽しめた。フランス絵画はCaravaggeschiのヴァランタン、シモン・ヴーエなど、スペイン絵画はエル・グレコ、ホセ・リベーラ作品など、ネーデルランド絵画はJ.V.ライスダール、ピーテル・デ・ホッホ作品など、フランドルはヴァン・ダイク作品(ルーベンスの影響が見えて面白い)など、興味深い作品もなかなか多かった。
 イタリアン・バロック作品では、ヤコポ・ヴィニャーリ、ジュゼッペ・マリア・クレスピなどにCARAVAGGIOの影響を観た(勝手に?)。ちなみに、エル・グレコにもCARAVAGGIOの光を見たと言ったら笑われるだろうか?

 今回は、クリムトの『L' Accomplissement』のある近代・現代絵画の「La Musee d'Art Moderne et Contemporain」は別階になっており、時間が無かったので、泣く泣くあきらめた(T_T)

  
 
   
「Triptych of Earthly Vanity and Divine Salvationから
『ヴァニタス(虚栄)』(La Vanite
c. 1485 板に油彩, 22 x 14 cm
ハンス・メムリンク(Hans Memling, 1440- 1494)

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「ヴァニタス(La Vanite)」(表)
c. 1485
板に油彩, 22 x 15 cm

   
 フランドルの画家、ハンス・メムリンク(Hans Memling, 1440- 1494)の『La Vanite(ヴァニタス・虚栄)』は、
絵画的な完成度と言うよりも、作品の持つミステリアスな部分に惹かれたとも言える。

 この鏡を持った女性像は、元々三幅対の連作パネル画(リバーシブル仕立)、表中央に位置する絵である。表の左右両翼には死神と悪魔が、この『ヴァニタス』の裏側には天使に囲まれた救世主キリストが描かれている。人間の死と救済を表現しているそうだ。やはり宗教的教訓画、いわゆる寓意による道徳画と言えのだろう。

 さて、この長い髪に冠をした女性は、持っている鏡に自分を写いているので、ヴァニタス画だなと、ド素人の私でもすぐ判かるところが嬉しかった(笑)。また、脱げたサンダルの寓意は知っているけど、裸にサンダルは今まで見たことが無い。結婚とか貞淑に関連するのだろうとは推測できるが、後でサンダルの寓意は調べたいと思っている。

 
しかし、
このぬけぬけとした裸の女性を観て道徳感なんて感じられるだろうか? 
まぁ、挑発的ではあるが、色気もあまり感じられないのだけどね(^^;。が、当時にしてみれば、この女性の描き方は、かなり際どかったのでは...と心配してしまった(^^;;

 実は、不思議なことに、このとり澄ました裸の女性よりも、背景の方に目を奪われてしまったのだ。後方に広がる水車小屋のある緑の牧歌的な田園風景にはフランドル風の細やかな描写が観られる。足もとのタンポポなど草花の緻密な描写も美しい。だからこそ、そこに犬たちとともに、唐突に佇む女性像はなんだか異様なのだ...。
      

 女性の足もとの犬たちにもきっと寓意があるに違いないと睨んでいたのだが…やっぱりあった(笑)。毛のふさふさした白い犬は結婚の絵に良く描かれる種類だそうで、奥にうずくまるグレーハウント犬は繁殖と多情を表わすそうだ。ということで、この絵は「虚栄と渇望」を意味するらしい。また、メムリンク作品には水の流れが描かれていることが多いと言う。人生の流れを象徴するのでは、ということは容易に想像できるが、この作品も小川と水車小屋が見える。では水車小屋は何を表すのだろうか?また、足もとの草花にも寓意はあるのだろうか?

 田園風景と裸の女性の、妙にちぐはぐで意味深な佇まいは、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。寓意をあれこれ考えながら観ているうちに、ますます謎めいてくる絵なのだ。まるで観る者を惑わすかのように....。
  
 
 ちなみに、この作品はジャックマール=アンドレ美術館所蔵の『処女の寓意』の系譜に連なるらしい(でも、見た記憶がない(^^;)。こちらは、水晶塔の頂にいる処女を守る2匹のライオン。すなわち、純潔を守ることの道徳的寓意と、私でも明快に想像できる。この2つの作品が呼応しているのだとすると面白いのだが...。
   

 ついでに、構図が似ているので、ギュスターヴ・モロー美術館の『妖精とグリフォン』を一緒に紹介してしまおう。こちらの妖精もミステリアスだ。もしかして、突然口が裂け牙を剥いて襲いかかってくるかも...(makoさま、ごめんなさい(^^;)。

   
  


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「救世主キリスト」(裏)
c.1485
板に油彩 22 x 15 cmクリック↑


ハンス・メムリンク
『処女の寓意(Allegory with a Virgin)』
1479-80
パネルに油彩  38,3 x 31,9 cm
ジャックマール=アンドレ美術館 


ギュスターヴ・モロー

『妖精とグリフォン』
1876年頃
カンヴァスに油彩 212X120cm
ギュスターヴ・モロー美術館


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ノートルダム大聖堂
ゴシック様式の壮大な教会だ。薔薇窓のステンドグラスが美しかった。
   
 美術館を出ると、ホテルに預けた荷物を受け取りに戻った。その足でタクシーで駅に向い、ナンシーへと列車で移動だ。

 ストラスブールで宿泊したホテルは、ノートルダム聖堂からイル川に向って7分ぐらいという程良い位置にあり、この旅行中で一番エレガントなホテルだった。
 朝食は小さな広場に面したテラスで。小鳥のさえずりと、心地よい初夏の朝の空気に食欲も出る(笑)。やはり、仏蘭西はパンが美味しい。思ったのだが、パンの美味しさは塩加減にあるのではないか?もちろん、焼き方もだが、この何気ない塩味がチーズともワインとも絶妙に合うのでは...と、ひとり合点していた(^^;

 大聖堂近辺は、イル川沿いに古い街並みを残しているので、ふとアムステルダムの街並みを思い出す。ロマンチック街道を巡った時と同じような、ドイツ的メルヘンチックな趣もある。

 その、ストラスブールに別れを告げ、さて、いよいよCARAVAGGIO作品のあるナンシーへと...いざ!(笑)


  (ひとり言:急いで書いたので手抜きだったかも...(^^;)
   

2003/07/28 UP

まだまだ 続きます(^^;

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